現場から起こすDX:目的と手段を逆転しないための3つのポイント
今回もICT経営パートナーズ協会の会長として投稿させて頂いた記事を、弊社ホームページでもコラムとして掲載させて頂きます。
先日、弊協会の活動の一環で東京商工会議所のぴったりDXの相談ブースにて様々な企業様からDX化にむけてのご相談を受けた際に感じたことがあり、お伝えしたく筆をとらせて頂きました。
DX相談会で現場の方々から相談を受けた際、多くの方が「このツールが欲しい」「あのツールを導入したい」という具体的なツール名を挙げていました。しかし、話をよく聞いてみると、彼らが抱えている課題解決には、別のツールの方が適していることがほとんどでした。
よく考えると、程度の差はあるにしても、中央省庁や大手企業から中小企業まで、日本ではよく遭遇する場面であると思いました。
なぜこのような誤解が起こってしまうのでしょうか?理由は以下の3つかと思います。
1. デジタルツールの知識不足
現場の方々は、日々業務に追われ、最新のデジタルツールについて十分な情報収集をする時間がないのが現状です。そのため、目立つ広告や口コミで評判のツールに飛びついてしまうケースが多く見られます。
2. 目的と手段の逆転
本来、DXは「業務効率化」「新たな価値創造」などの目的を達成するための手段であり、ツールは目的達成の道具です。しかし、現場では「デジタルツールを導入すること」が目的化してしまうことがあります。これも原因として、手っ取り早く課題を解決したいという思いだけでなく、目立つニュースや記事に躍らせれて、ツールがあれば夢がかなうと錯覚してしまうことも一因でしょう。
3. ベンダーの営業トークに惑わされる
ITベンダーの営業担当者は、自社の製品を売り込むために、様々なセールストークを展開します。その結果、現場の方々は、自社の課題に合致していないツールを導入してしまうリスクがあります。これは、相談に来ている企業の今までの失敗談としてよく聞く話です。
DX成功のためには、現場の積極的な参画こそが、鍵となります。そのためには利害関係者全員が目的と手段を混同することがないようにしなくてはなりません。
目的と手段を逆転しないための3つのポイント
1. 課題を明確にする
DXを成功させるためには、まず自社の課題を明確にすることが重要です。「何のためにDXを推進するのか」「どのような課題を解決したいのか」を明確にすることで、必要なツールが見えてきます。ツール提供側は、現場の方々に課題を明確化することの重要性を教えるところから始めることも遠回りのようでありますが、結局は近道です。なぜなら、課題が明確化されていなければ、ゴールのないところに向かって走っているようなもので、いくら走っても成功したかどうかも分かりません。
2. DX検討をする側は、専門家の支援を活用する
デジタルツールの知識や経験が少ない場合は、DX推進の専門家に相談することをおすすめします。専門家は、自社の課題に合致したツールを提案し、導入後のサポートまで支援してくれます。その際の留意点としてはツールとは中立的立場の専門家に相談することが良いかと思います。自社で開発・販売しているツール等を背負っているとどうしても自社商品を販売したいという意識が働くのは自然のことなので。
3. 現場の意見を徹底的に聞き取る
専門家は現場で実際に業務に携わる人たちの意見を聞き取ることは、最適なツールを選定するために不可欠です。どのような業務で困っているのか」「どのようなツールがあると助かるのか」を丁寧に聞き取りましょう。始めて会う現場の方々の悩みを5分程度で整理することができるSPINなどは有効です。
可能であれば、全ての企業でDXリテラシー標準(DSS-L)程度までを身に付けることが良いかと、改めて思いました。弊協会ではそのような教育関連の取組も進めており、一層加速していきたいと考えています。是非、ご一緒に取組んでいただける方々はお知らせ願えますでしょうか。
コメント